衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2016年10月) | 衛生管理者 講習会・通信講座

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衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2016年10月)

ここでは、2016年(平成28年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第一種衛生管理者、特例第一種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第二種衛生管理者試験の範囲には含まれません。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2016年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2016年10月)
衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2016年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2016年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2016年10月)



問11 化学物質等による疾病のリスクの低減措置を検討する場合、次のアからエの対策について、優先度の高い順に並べたものは(1)~(5)のうちどれか。

ア マニュアルの整備等の管理的対策
イ 有害性の高い化学物質等の使用の中止
ウ 化学物質等に係る機械設備等の密閉化、局所排気装置の設置等の労働衛生工学的対策
工 個人用保護具の使用

(1)ア-イ-ウ-エ
(2)ア-イ-エ-ウ
(3)イ-ア-エ-ウ
(4)イ-ウ-ア-エ
(5)エ-ア-イ-ウ


答え(4)
化学物質等による疾病のリスクの低減措置を検討する場合、その対策として優先度が高い順に次のように考えられます。
①有害性の高い化学物質等の使用を中止します。また使用を中止することが困難な場合には、より有害性の低い物への代替化を行います。
②作業プロセスの変更などを行い、化学物質等のばく露を低減します。
③設備の密閉化や局所排気装置の設置等の工学的な対策を行います。
④マニュアルの整備や立ち入り禁止措置など作業管理的対策を行います。
⑤個人用保護具を使用させ、化学物質等が体内へ侵入するのを防ぎます。



問12 化学物質とその常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、「ガス」とは、常温・常圧で気体のものをいい、「蒸気」とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいう。

(1)ホルムアルデヒド ・・・・ ガス
(2)塩素 ・・・・・・・・・・ ガス
(3)二硫化炭素 ・・・・・・・ 蒸気
(4)二酸化硫黄 ・・・・・・・ 蒸気
(5)水銀 ・・・・・・・・・・ 蒸気


答え(4)
(4)は誤り。二酸化硫黄は、亜硫酸ガスともいわれ無色の気体で、常温・常圧の空気中では「ガス」として存在します。食品の保存料、酸化防止剤、紙などの漂白剤に用いられます。
(1)(2)(3)(5)は正しい。



問13 一酸化炭素に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一酸化炭素は、無色・無臭の気体であるため、吸入しても気が付かないことが多い。
(2)一酸化炭素は、エンジンの排気ガス、たばこの煙などに含まれる。
(3)一酸化炭素中毒は、血液中のグロブリンと一酸化炭素が強く結合し、体内の各組織が酸素欠乏状態を起こすことにより発生する。
(4)一酸化炭素中毒では、息切れ、頭痛などから始まり、虚脱や意識混濁がみられ、濃度や吸入時間によっては死亡に至る。
(5)一酸化炭素中毒の後遺症として、健忘やパーキンソン症状がみられることがある。


答え(3)
(1)は正しい。無色・無臭で気付かないことが多いため、サイレントキラーとも呼ばれますね。
(2)は正しい。一酸化炭素は、内燃機関(エンジン)の排気ガス、たばこの煙に含まれます。湯沸かし器や暖房機器などの不完全燃焼で発生します。
(3)は誤り。一酸化炭素中毒は、血液中のヘモグロビンと強く結びつき、酸素が運搬できなくなり発生します。
(4)は正しい。濃度が0.06%の環境で1時間呼吸すれば、頭痛などの初期症状が始まるといわれています。
(5)は正しい。急性中毒が回復した後も、健忘やパーキンソン症状(手足のふるえ等)などの後遺症が残ることがあります。



問14 作業環境における騒音及びそれによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)騒音性難聴は、初期には気付かないことが多く、また、治りにくいという特徴がある。
(2)騒音性難聴は、内耳にある聴覚器官の有毛細胞の変性によって起こる。
(3)騒音下では、精神的疲労が生じたり、自律神経系や内分泌系にも影響を与えることがある。
(4)騒音性難聴は、通常、会話域である500 Hzから2,000 Hzの周波数帯で著しい聴力低下を示し、この聴力低下の型をC5dipという。
(5)等価騒音レベルは、時間的に変動する騒音レベルのエネルギー的な平均値を表す量で、変動する騒音に対する人間の生理・心理的反応とよく対応している。


答え(4)
(4)は誤り。騒音性難聴は、4000 Hz付近の音から始まり、この聴力低下の型をC5dip(シー・ファイブ・ディップ)といいます。
(1)(2)(3)(5)は正しい。



問15 金属などによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害や手指の震えなどの症状・障害がみられる。
(2)鉛中毒では、骨の硬化、斑状歯などの症状・障害がみられる。
(3)マンガン中毒では、筋のこわばり、震え、歩行困難などのパーキンソン病に似た症状・障害がみられる。
(4)カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎障害などの症状・障害がみられる。
(5)砒(ひ)素中毒では、角化症、黒皮症などの皮膚障害、末梢(しょう)神経障害などがみられる。


答え(2)
(2)は誤り。鉛中毒の症状には、赤血球のヘモグロビン合成の障害による貧血、末梢神経障害(伸筋麻痺(ひ))、腹部の疝(せん)痛があります。骨の硬化、斑状歯などの症状・障害は、フッ化水素のばく露によってみられます。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問16 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)空気中の酸素濃度が15~16%程度の酸素欠乏症では、一般に頭痛、吐き気などの症状がみられる。
(2)金属熱は、鉄、アルミニウムなどの金属を溶融する作業などに長時間従事した際に、高温により体温調節機能が障害を受けたことにより発生する。
(3)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(4)レイノー現象は、振動障害に特有の末梢(しょう)神経障害で、夏期に発生しやすい。
(5)凍瘡(そう)は、皮膚組織の凍結壊(え)死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。


答え(1)
(1)は正しい。他にも、集中力や筋力が低下するなどの症状がみられます。
(2)は誤り。金属熱は、アーク溶接作業等で起こることがありますが、体温調節機能が障害を受けることで発生する障害ではありません。金属熱では、金属のヒュームを吸入した後に、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられます。
(3)は誤り。減圧症は、減圧に伴い血液中に溶け込んでいた窒素が原因となり起こります。酸素ではありません。
(4)は誤り。レイノー現象は、血管が収縮して振動の影響を受けやすくなる冬期に発生しやすいことで知られています。夏期に発生しやすいというのは誤りです。
(5)は誤り。凍瘡は、日常的に起こるしもやけのことで、0℃以上の寒冷にばく露した場合でも発生します。凍結壊死を起こすのは、凍傷です。



問17 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)酢酸メチルによる健康障害では、視力低下、視野狭窄(さく)などがみられる。
(2)ノルマルヘキサンによる健康障害では、頭痛、めまい、多発性神経炎などがみられる。
(3)N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害では、頭痛、めまい、肝機能障害などがみられる。
(4)弗化水素による健康障害では、貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼなどがみられる。
(5)ベンゼンによる健康障害では、再生不良性貧血、白血病などがみられる。


答え(4)
(4)は誤り。弗化水素による健康障害では、眼などへの刺激が起こり、高濃度ばく露では肺炎、肺水腫、腎障害がみられます。貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼなどが起こるのは、ニトロベンゼン等の蒸気を吸入した場合です。
(1)(2)(3)(5)は正しい。



問18 厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)評価の指標として用いられる管理濃度は、個々の労働者の有害物質へのばく露限界を示すものである。
(2)A測定は、原材料を反応槽へ投入する場合など、間欠的に大量の有害物質の発散を伴う作業における最高濃度を知るために行う測定である。
(3)B測定は、単位作業場所における気中有害物質濃度の平均的な分布を知るために行う測定である。
(4)A測定の第二評価値及びB測定の測定値がいずれも管理濃度に満たない単位作業場所は、第一管理区分になる。
(5)B測定の測定値が管理濃度の1.5倍を超えている単位作業場所は、A測定の結果に関係なく第三管理区分になる。


答え(5)
(1)は誤り。管理濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を、単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものです。個々の労働者の有害物質へのばく露限界を示すものとしては、許容濃度があります。
(2)は誤り。A測定は、単位作業場所の有害物質の濃度の平均的な分布を知るために行う測定です。
(3)は誤り。B測定は、発散源に近接した作業場所における最高濃度を知るために行う測定です。つまり、(2)(3)の説明が反対になっています。
(4)は誤り。A測定の「第一評価値」及びB測定の測定値がいずれも管理濃度に満たない単位作業場所は、第一管理区分になります。第二評価値ではありません。
(5)は正しい。



問19 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)一酸化炭素用の防毒マスクの吸収缶の色は、赤色である。
(2)有機ガス用の防毒マスクの吸収缶の色は、黄色である。
(3)型式検定合格標章のある防じんマスクでも、ヒュームに対しては無効である。
(4)防じんマスクの手入れの際、ろ過材に付着した粉じんは圧縮空気で吹き飛ばすか、ろ過材を強くたたいて払い落として除去する。
(5)有毒ガスの濃度が高い場合には、電動ファン付き呼吸用保護具を使用する。


答え(1)
(1)は正しい。
(2)は誤り。有機ガス用の吸収缶は黒色です。一酸化炭素用と有機ガス用の吸収缶の色は、必ず覚えておきましょう。
(3)は誤り。型式検定合格標章のある防じんマスクは、粉じんやヒュームなどの粒子状物質に対しては有効です。
(4)は誤り。防じんマスクの手入れは、水洗できるものは水洗し、できないものは湿らせた布などで粉じんをふき取ります。
(5)は誤り。有毒ガスの濃度が高い場合には、送気マスクか自給式呼吸器を使用します。電動ファン付き呼吸用保護具は、粉じんなどの粒子状物質に対して有効ですが、有毒ガスには効果がありませんので注意しましょう。



問20 特殊健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)有害業務への配置替えの際に行う特殊健康診断には、業務適性の判断と、その後の業務の影響を調べるための基礎資料を得るという目的がある。
(2)特殊健康診断の実施に当たっては、現在の作業内容及び有害要因へのばく露状況を把握する必要がある。
(3)特殊健康診断では、対象とする特定の健康障害と類似の他の疾患との判別や異常所見の業務起因性についての判断が、一般健康診断よりも一層強く求められる。
(4)有害物質による健康障害は、多くの場合、諸検査の異常などの他覚的所見より自覚症状が先に出現するため、特殊健康診断では問診の重要性が高い。
(5)体内に取り込まれた有機溶剤の生物学的半減期は短いので、有機溶剤等健康診断における尿中の代謝物の量の検査のための採尿の時刻は、厳重にチェックする必要がある。


答え(4)
(4)は誤り。有害物質等による健康障害の大部分のものは、他覚的所見が自覚症状に先行して出現するので、特殊健康診断では問診よりも諸検査に重きが置かれています。
(1)(2)(3)(5)は正しい。

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